最近の地域事情

韓国

青瓦台(韓国大統領府)ホームページ、「国民請願および提案」のキャプチャ:(http://www1.president.go.kr/petitions)
青瓦台(韓国大統領府)ホームページ、
「国民請願および提案」のキャプチャ:
(http://www1.president.go.kr/petitions)

文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後、新たに始まった制度の1つに「国民請願および提案」があります。これは、青瓦台(韓国大統領府)のホームページにある「国民請願」という掲示板に、国民が政府への要望・希望を書き込むもので、1つの請願に対し、1か月で20万人以上の「いいね!」が集まった場合には、政府関係者が直接、映像を通して回答することになっています。

どんな請願が行われているのかというと、日本でも少し話題になったものとしては、平昌オリンピック女子スピードスケート・パシュートで、1人の選手を「置いてけぼり」にした選手2人を代表から外せよ、というものがありました。先日は、韓国人と結婚して韓国に住んでいる日本人女性が「韓国政府の外国人政策は、韓国人を差別し、外国人を優遇している」と投稿し、話題になりました。まじめ(?)な請願もありますが、中には、個人的な日記のようなものだったり、これは政府に希望を出しても解決できないのでは?というものなどもあるようです。そのような請願には、「いいね」は集まりませんし、例えば、悪口や暴力的な内容、青少年に有害と判断される内容については、削除されます。

日本でも韓国関連のニュースはよく報道されるようになったとはいえ、ごく一部です。国民請願をのぞいてみると、日本では伝わらない、韓国国民の考えや今話題になっていることを知ることができると思います。

中国

『東方新報』(日本で刊行されている中国語新聞)からYahooニュースに転載されたニュースで、中国陝西省西安市で、ショートムービーで人気のあるスマートフォンアプリ「抖音」(Tik Tok)を使って、西安市の観光アピールをしているという現象が話題として取り上げられていました。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180825-03187072-clc_toho-cn

西安市観光局の方々とは、何度かお仕事やプライベートで交流がありますが、彼ら、彼女らの様々なアイディアとそれを形にする実行力にはいつも感心しています。1990年代後半から2010年くらいまでの西安市の観光状況と、新たに開発された観光とについては授業でも何度かとりあげてきましたが、そのあと話し合っていた、スマートフォンを介した技術と西安の文化資源の融合についての取り組みについて、日本でニュースから知ることになるとは驚きです。昨年は、西安に帰れなかったので、変化の速い中国にすこし遅れた気もしますが、来週からの調査の合間に、時間があれば、また彼ら、彼女らのところに話を聞きにゆこうかと思っています。

さて、このニュースが面白いのは、現代中国を象徴する事柄がいくつか詰まっているからです。

そのうちの一つは、技術と観光の関係です。中国では、日本以上にスマートフォンの爆発的な普及と、それを使って、多くの人々が情報を発信、受信するつながりを指摘できます。スマートフォンは、間違いなく、中国の生活を全般的に刷新した道具となりました。みなさんも、スマホを片手に観光する(そして、多くはスマホで電子決済している)中国からの観光客をみかけてことがあるのではないでしょうか。

実際に、Wechatなどでのやり取りは、日本の多くの人々のラインでのやり取り以上ですし(Wechatは入力も速くて便利ですが、日本以上に音声でのやり取りも頻繁に見受けられます)、その多機能さには驚くばかりで、スマホなしでは中国では外出することが怖くなります。そして、時間が取れて気が向けば海外に旅行に行き(数年前は、おばちゃんたちにはフランスやイタリアが人気でしたが、今はどうでしょう)、国内ではインスタ的なSNS映えする絵を撮りにゆく、という近年の状況を反映しているからです(「インスタ的」と言ったのは、中国国内ではインスタグラムは、グーグルやツイッター、フェイスブック、ラインと同じく規制されているためです)。鄧小平の「黄山談話」から中国の観光を追いかけてきた私には、隔世の感があります。

ほかにも、たとえば、10年ほど前に彼らと話し合っていた「体感する/経験する観光」構築についていえば、彼らは新たに「摔碗酒」というイベントを生み出しました(西安市の体感する観光について小文を書いたことがあります。詳しくはそちらを参照してください)。これは、西安的には新しいイベントですが、東方新報の記事によれば、「酒杯をその場で叩きつけて割り、1年の安泰を」祈る(「歳歳平安」は、「歳」の漢字が酒杯の「砕」と同音になります)そうですから、中国得意の諧音文化に通じます。もっとも、中国の葬儀の研究をしている私からは、西安周辺でみられる「摔盆」(出棺に際して、世代が一つ下の主要な人物が、焼紙していた陶製の容器を地面にたたきつけて割る儀礼)を思い起こしてしまいますが。

いずれにせよ、陝西省を眺めはじめて約20年経ち、その間には、日本人観光客の減少や2地観光から取り残される、兵馬俑や華清池など郊外観光が多く市内には睡眠にのみ戻ってくる、リピーターが少ないなど、いろいろな問題が指摘されてきました。けれども、こうして、現在の中国の状況と折り合いをつけながら、新しい試みを繰り返し、そのうちのいくつかが成功して観光客を増加させている様子を見ることは、大変興味深いものがあります。